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(長文御免)せん妄パート2『夢かうつつか幻か』 [日記]



ひどいせん妄から抜け出して、
ついでに身体に差し込まれていた色々なコードが引き抜かれ、
痛かったり、おトイレが面倒だったりの憂鬱な夜、それは始まった。


夜9時、頭の上の方で舗装路を駆け抜ける音がした。何回も何回も。
「さぁ、呼ばれるうちが花だよ!」
どう考えても婦長さんの声だ。
ちなみに顔は三原じゅん子にそっくりだ。


看護士がぞろぞろと病院から長い道を下っていく(音がする)。
「じゃ、売ってくるから!」
なんなんだ?売る?
男どもの喧嘩の声も聞こえる。
11時頃までそれは続いた。


・・・夜中、トイレに行くと、病室の陰から看護師が飛び出してくる。
否。救急に備えて、ステーションに座らず、患者を見張っているのだろう。
・・・だよな。


次の日、僕はかなりクールに夜を迎えた。
夜9時。やはり、明確に看護師たちが外へ出かけていく声がする。
婦長さんも吠えている。
クールな僕は頭側の壁を思い切り叩くと叫んだ。
「うるせぇんだよ!この野郎!」
一瞬、音が止んだ。
(やっぱり)。これはせん妄などではなく現実だ。
奴らは何しに町へ行く?はっ、腎臓移植?・・・臓器売買?
トイレに行く。やはり見張っているかのような看護師の動きとカーテン越しのパソコンの明かり。


ナースステーションにいる見知らぬ看護師に聞く。
「看護師のみなさん、呑みにでも行っているの?」
「は?まさかこのコロナ禍に。みんないますよ」
「なんか外に行っているみたいですが・・・」
「?あのぅ、ここ4階ですから。痛みはどうですか?」


(4階。確かにそうだし、入院してから急に寒くなり大雨も降っていた。外なんか行くわけがない。
やはりせん妄なのか?大丈夫なのか、僕ちゃん)。
次の土曜日はまるっきり看護師さんや患者さんの雰囲気が変わっていた。
東南アジア風の看護師さん、患者は長く居ついたようなお年寄りばかり。
雰囲気が全然、違うのだ。(やはり何かある!)。


主治医の巡回(休みじゃないのか?)。
「うん。いい感じ。傷口も綺麗ね」
主治医は強烈なガムテみたいのをはがし、脱脂綿をはがし、
なんとホチキスを抜き始めた。

(糸でなく、ホチキスで止めてたのか!ホームセンターで買ったのか?

・・・なんかピアスみたいでカッケーが)。
すごい技術力なのだろう約30センチに渡る傷口がまるでレース編みのように綺麗に閉じられている。
「はいっ、じゃもう明日、退院でいいわよ。よかったわね」
(退院?・・・おかしい。やはり何かあるのだ。スマホのカメラで気になる所は撮影した。
家に帰ったら調べてやるぅ!)。
次の日曜日から妹の家に一週間、居候。快適だ。
予定通り、先に持ち込んでいたギターを弾いてみる。
・・・弾けない。何の曲も浮かばないし、頭と指がつながってない。
もう今日は手術から約一か月。
お腹の傷が痒くてたまらん。自民党が笑顔で笑っている。
コロナが少し落ち着いている。小室さんが帰って来るそうだ。
・・・そろそろ調べてみるか。やめた。それより散歩しないと、フレイルで大変だ。
秋だよなぁ。ギター弾く気ならんなぁ。

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せん妄 [日記]

『せん妄』

遠くに堤防と真っ青な海。
随分と旅行なんてしていない僕は少しはしゃいでいた。
四人部屋はいっぱい。男ばかり。
みんなカーテンを閉めっきり。
淡い光が漏れているのはパソコンのせいだろう。
そうもうみんなテレビなど観やしない。ましてやオリンピックなど。
僕もスマホひとつだ。
YouTubeで小和瀬さとみのユーミンを聴く。
透き通ったそれでいて新しいニュアンスが心地よい。
海に目をやり、遠い昔を思い出す。
ユーミンはなんて最強なんだろう。

次の日の午後、ショーは始まった。
麻酔医の細やかな説明。
裸の僕のまわりで踊り続ける看護師たち。
ぼっ。電気はいきなり消えた。


・・・寒い。恐ろしい寒さの中、僕は起きた。
氷の世界。ブリザード。
ひとりの看護師が神経質に部屋を磨いている。
黙々と作業をしている。
僕の存在は無視されている。
泪が込み上げてきた。
(死ぬのだろうか?)

「カチャカチャ」
氷の世界の向こう、
壁の向こうから電球の明かりが漏れている。
そこから見える神経質な会話。
手術道具のぶつかる音。

声を出してみた。
「ここだよ。ここにいるよ」

看護士がファニークラウンのように笑ってこっちを向いた。
「完食できた?」


・・・「ここは大学病院だから、皆さんのご意見を伺っているの。
あなたはもうお年だから、医療への期待をお聞きしたいの?」
「・・・僕は心臓病で、全国心臓の会にいたけど、
そこは心臓病の子供たちの「親」の会だったんだ。
僕たち思春期より上の患者は無視されていた。
だからレポートを書いたんだ。
思春期、働き盛り、シルバーからの要求を・・・。
会長から書き直しを求められていたけど突っぱねた。
そうしたら会長のやはり心疾患のある息子が言ったんだ。
「おかぁさんも辛いだろうけど。まず患者が辛いんだよね」
べてはハッピーエンドさ」
「そんな話はないわ。夢よ」



・・・妙に色っぽいお姉さんと逞しいお兄さん。
ステーキ用の大きなフライパンの上で
僕の下腹部を切り刻んでいる。
そんなに大きくないあそこをお姉さんが上手にひっくり返す。
(あぁ、恥ずかしい)。
僕はお兄さんにやたら話しかける。
真面目な会話で恥ずかしさから逃げようとしているが、
お姉さんのコロコロ笑い声にはかなわない。


・・・どこか東南アジアの少女がいる。
看護士さんらしい。
「起きましたか。ご飯食べれそうですか。痛くないですか」
「ううむ」
体中のどこも痛い所はなかった。食事を頼む。
180gのご飯。僕には多い。マーボー豆腐は遠慮した。
「飴ちゃんいる?」
妹が用意してくれた看護師さんへの感謝の印だ。
「あぁ、ごめんさい。私いりません。受け取るのいけないのです。ごめんなさい」
・・・最近は医師会系も厳しくなったのかな。
なんだか哀しくなって、目を閉じる。



ユーミンが聴こえた。
手術から三日目が過ぎていた。

年配の看護師さんに聴く。
「すごい冷たい部屋にいました?」
「ER?ええ。貴方は大手術だから次の日の朝までERにいたのよ」

「なんか医療について聞きませんでしたか?」
「あぁ、あったわよ。隣の舜さんね。貴方には何も聞かなかったわ」

「手術はうまくいったのかなぁ」
「完璧よ、多分」

「東南アジアの看護師さんは・・・」
「東南アジア?ここは横浜よ。大丈夫?」

何本かの管が身体から抜かれ、僕は現実に戻った。
ふらつきながらトイレに行き、
痛みに耐え、ひたすら眠った。

外は篠つくような雨が降っていた。




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ちょっくら、入院してくんね^@^; [日記]


「行ってきます」



「行ってらっしゃい」



なんて、家は作れなかったけど。



「おかえり」



って、言ってくださいね。


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