SSブログ

小説か? [言葉]

ニュー新橋会館2階では女が艶然と微笑む。
呑めてりゃ幸せなリーマン達はそう言い放つが来やしない。
おこずかい月3万円の身分じゃ無理もないか。
早紀は洗濯済みのタオルで、張りのあるふくらはぎを包み、もみ、揺らす。
そのリズムに合わせて乳房も重く揺れる。
はだけた胸にいやらしい視線だけがからみつく。
(私はチャイニーズじゃないよ)。
2階にあるトイレは有料だが、見張り番はいない。
だから2階まで用を足しに来る客も多い。
後は古めかしい昭和のゲーセンで暇をつぶす役立たずか同業者だ。
「早紀」
急に呼ばれ、用心深く顔を上げる。
(たかしだ)。
「あら、いらっしゃい。嬉しいわ、た・か・し・さん」
チャイニーズの同僚が先に声をかける。軽く横っ腹を突いてやる。
「んっ」
「たかしさん、いらっしゃいませ」
「よう、空いてる?」
「当たり前じゃないですか。たけしさん御用達ですもの」
我ながら日本人ぽいご挨拶だ。
「じゃぁ、今日はロングで行くかな。ゴルフで腰やっちまってさぁ。よろしくな」
その腰が曲者だ。もう、屹立してるし。
「早紀、あっちも頼むな」
男が小声でしゃべる時はたいていよくない話だ。
たかしは半年くらい通い詰めている客だが、
まだ、私が日本人でサービスはしない、ということを理解していない。
こうしてマッサージをしているが、経営者。
しかも、この古めかしいビル、ニュー新橋会館2階を牛耳っている。
つまり、2階にあるチャーニーズ・マッサージ店はすべて私の店だ。
「あら、なんのことかしら」
乱暴にたかしをひっくり返すと、足裏の長さを整え、
ふくらはぎの承山を押してやる。
「あいたたたっ!わ、わかった、わかったって!」
まったく。軽薄な所を除けば結構いい男なのに・・・。
「そうそう。早紀、このビル、ニュー新橋ビル、潰れるんだって?」
「・・・まさかぁ。サラリーマンの聖地、
この新橋のSL広場とニュー新橋ビルが潰れるわけないでしょ」
「そうだよなぁ。待ち合わせっていうとここだしなぁ」
たかしの腰を軽く揉みながら、隣のベッドを見る。
チャイニーズがいけないサービスをお客に仕掛けている。
と言っても80年代のあのすさまじい風俗時代は終わった。
ハンドサービスまでだ。
「ううっ」いい歳のお爺さんだが、かつてよく遊んだくちなのだろうな。
昭和って奴は、まったくいい時代だったんだな・・・。
たかしがどこで情報を仕入れたのかは知らないが、
このニュー新橋ビルが潰れる、分かりやすく言えば買収されるのは本当だ。
来年の東京オリンピックのお陰様だ。
(この亜熱帯な日本、原発のゴミばらまいている日本にお客が来るのか?
まぁ、新橋も様子が変わってきたから、売れちゃうのは私にはいいことなんだけど)。


・・・ここまで書いたが続くのかどうか?
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:blog

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。