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鬼畜⑪ [小説]

お孫ちゃん中心の、
そんな珍しく和やかな中、
父親が亡くなった。
馬鹿兄が大腸がんになり、
その面倒をみるために、
自分の担癌の手術を伸ばしたためだ。
もちろん、鬼畜は「長男」様のご病気で反狂乱。
いきなり叫びだし、昼夜寝ずに、
兄貴の部屋を片付け、
新しい家具も買った。
ちなみに兄は
「病院で喘息を贅沢病と言われた」というトラウマで、
なかなか医者に行かなかった。
大腸が癌でつまって便通が悪くなっても行かない。
そしてここでもまた父母ともに「病院に行け!」とは、
怒鳴らなかった。
怒鳴ったのは俺だ。成長した次男が、
怒鳴りつけ、兄はがたブルだった。
そしてやっと行った。
ステージ4,5。
もうダメだろう。が鬼畜の看病は続いた。
手術日。すべての手配をしたおいら!は、
夜から朝方まで手術に付き合った。
もちろん鬼畜、父もいる。
お菓子を買ってきてやる。
どでかい癌こぶし大ふたつぶんの塊を持って医師が来た。
「無事、終わりました」
あまりに醜い癌の形に俺たちは凍り付いた。
もう、ダメだな・・・麻酔の取れた兄が出てくる。
こんな糞でも、死ぬとなると悲しい。
「無事、手術終わったぞ!お疲れ!」
「おうっ!」
あぁ、兄の口から「おうっ!」なんて言葉を聞けるとは・・・。

母親が嬉しそうに言う。
「私があんた(俺)に感謝するのはこれがはじめてよ!
ありがとう!」
・・・こんだけ憎まれていたわけだ。


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