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鬼畜② [小説]

まず、兄がかなり重度な喘息になった。
元々、小児喘息の気はあったが、
親は何もしなかった。
発作が起こると、
すごい呼吸音が聞こえてくる。
部屋に閉じこもっているが、
こちらは眠れないほど。
流石に苦しくなると、
一階のリビングに移る。
一週間くらいご飯は食べれない。
眠ることもできない。
起坐姿勢のまま。テレビを観ている。
俺はその横で親の様子を観る。
余り気にしてはいない。
でも、父親が寄って帰ってくると、
母親は食ってかかる。
「こんなにひどいのにどうして早く帰らないのよ!」
正論だが、そのまま父と母は眠ってしまう。
兄はリビングに残されたままだ。
俺も眠れなかった。
兄は県下でも2番目の高校に受かっていた。
しかし、なぜか中学の同級生、先生までに
「なんで、おまえが!」とかなりいじめられたようである
(俺の同級生の姉に聞いた)。
この頃、兄は3時30分には家に帰り、
手を消毒液で洗い、
ひたすらテレビを観ていた。
失望の中、父母に救いを求めているのに
このふたりは何もしなかった。
しばらくして、
少し離れた所の医者で処方された薬が効いた。
ただし、切らせてはいけない。
普通の母親ならきちんと取りに行くだろう。
行ったのは俺である。
外出時に発作が出て動けなくなった時も、
俺が家まで取りに行った。
普通はどうなんだろう。
あんだけすごい喘息の息子に何もしないのだろうか。
母親は。

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